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 低学年の男子です。目のまわりに じんましん と思える発疹が出ました。昨晩、発熱したのですが、今朝は解熱しました。

 以上の訴えでの受診例です。「ノド痛い?」と聞くと、(用心するかの表情で)「痛かった」と。

(メールでの相談事例ではありません。) 

 左右差はありますが、両眼周囲に膨疹(じんましん)が出ていました。

 ノドを診ますと、口蓋扁桃(扁桃腺)が腫大し、肉汁様に発赤していました。

 溶連菌性扁桃炎で、感染アレルギーによる蕁麻疹の可能性があることをお話しし、検査をさせてもらいました。

 即ち、赤く腫れた扁桃腺を採取棒でぬぐい、これを検体として、溶連菌尾迅速検査をしました。

 結果は陽性でした。

 抗生物質などを処方し、ノドのケアや飲水に関する具体的な提案もしました。

 経過は順調で、中一日を置いて、登校しました。

 

 溶連菌感染症は、図示した特徴があります。溶連菌(=A群 β 溶血性連鎖球菌)感染症は、予防接種で防げる病気(=VPD)ではないので、日頃から、ノドの健康を保つ生活が大切になります。

 [国立感染症研究所]にある[A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは]に詳細が書いてあります。これは同研究所[感染症発生動向調査 (IDWR)]の2003年の記事であり、つまり、この病気・感染症自体の本質は古今東西変化がないとして良いのです。

 上記内容を抜粋します。

※ A群溶血性レンサ球菌咽頭炎はいずれの年齢でも起こり得るが、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な臨床像を呈する症例は少ない。
※ 感染性は急性期にもっとも強く、その後徐々に減弱する。急性期の感染率については兄弟での間が最も高率で、25%と報告されている。

[注 ⇒ 家庭内での水平感染により、大人(父・母)が発症(発熱・咽頭痛)を呈して受診に至る例もあります。]

※ 通常、患者との接触を介して伝播するため、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校などの集団での感染も多い。

[注 ⇒ 飛沫・接触感染です。飛沫感染とは、会話・咳などで、つばを浴びて被感染することです。]
※ 学校での咽頭培養を用いた 研究によると、健康保菌者が15 ~30%あると報告されているが、健康保菌者からの感染はまれと考えられている。

[注 ⇒ 検査で、たまたま陽性になる例や、検査結果自体が“疑陽性”のこともあります。

 家庭内、保育園・小学校や職場などで、誰かが溶連菌感染症による咽頭炎・咽頭扁桃炎・扁桃炎(扁桃腺炎)と診断されたら、周囲の人は、溶連菌を浴びている(被感染している)との認識で、ノドのケアをすることが大切です。

 こうした状況は、実は、日常茶飯事と言えます。日常から・常日頃から、ノドの疲労を来さないように(ノドのケアを大切に)して欲しいと願います。]

 溶連菌感染症の診療自体は、進歩しています。とくに、国民皆保険制度にある日本は、迅速診断が保険診療で可能になっており、(小児の医療費支援制度が整っている現状もあって、)検査が多用されています。

 国は、「鼻咽頭炎(=かぜ症候群=風邪)の大半はウイルスが原因であり・・・」と啓発しています。が、ウイルス感染症か否かによらず、溶連菌の迅速検査が多用されている現状は、つまり、医師の“診たて”以前に、検査が実施されている風潮を嘆いている一人です。

 つまり、検査が陽性だったから溶連菌感染症で、抗生物質を処方するとか、ウイルス感染症かどうかわからないから抗生物質を処方するなど、コマッタ診療が少なからずあります。

<脱線しました。>

 「ノドのケア」については、日頃から上手に(達人に)なって欲しい願いがあります。勿論、ノドの異変を感じた際にはより丁寧に。咳、発熱など、感染症の症状を呈した際はなおさら、丁寧に実践しましょう。具体的にはコチラ「ノドのケア」や、「インフルエンザシーズンの健康生活」などを参照してください。 

 

 脱水症・脱水傾向に陥らないことも大切です。水分摂取が不足しないように、日頃から配慮して欲しいと願います。

 感染症にかからないために、または、発病しても軽くて済ませるために、とても大切なことです。

 

 溶連菌感染症においては、周囲に溶連菌性咽頭炎などの発症者がいても、「健康保菌」で留めたいわけで、日頃からの、ノドのケアや脱水症(傾向)にならない生活が大切になっるのです。

  文責:大谷恭一 2019/6/20記

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